ようこそ杵徳会へ

解説の目次経由

お勉強の目次経由


さて、まず長唄といっても一体どんな内容なんだろうと思ってらっしゃる方々。悲劇喜劇恋物語シリアス荒唐無稽。ありとあらゆるような物語に富んだ長唄の、はじめは目出たくもあり滑稽でもある「コミカルもの」と参りましょう。

内容と申しましても、昔の日本人の感覚での滑稽さは現代では理解しにくい部分も有りますので、そこは『杵屋徳衛のページ』です。多少の無理も有りますが許せる限り現代的に独断と独断で表している部分も有ります。が、大筋を理解していただいて、多少の理屈に合わない部分は「まいいか!」程度に飛ばしてください。(学者ではないので学問的と言うよりもフランクに感じてください)

杵屋徳衛の現代語解釈解説集

末広狩 すえひろがり>(歌詞)【”ふ”は現代では”う””お””ん”など…例・ねんのう・たのおだ(たのんだ)・さそおよ…など】

「えがく舞台の松竹も 千代をこめたる彩色の若緑なるシテとアド 「まかり出しも恥ずかしそうに 声張り上げて

「太郎冠者あるか 「おん前に 「ねんのふ早かった 「頼ふだ人は今日も又 恋の奴のお使いか 返事待つこい忍ぶ恋

晴れて扇も名のみにて「ほんに心も白扇 いつか首尾して あおぼねの ゆるぐまいとの要の契り 「堅く締め緒の縁結び

神を頼むの誓い事 濡れて色増す花の雨 「傘をさすなら 春日山 これも花の縁とて 人が呑んでさすなら 我も呑んで

さそふよ 花の盃 花傘 「実にもそうよの やよ実にもそうよの 実に誠 「四つの海 今ぞ治まる時津風 波の鼓の聲

澄みて 唄ふつ舞ふつ 君が代は 万々歳も限り無く 「末広狩こそ 目出たけれ 末広狩こそ 目出たけれ

これは「扇子」ですね。「おおぎ」「末広(すえひろ)」とも言います。 そして、この曲はご主人に

扇子を求めて(買って) くるように言われた「太郎冠者たろうかじゃ…召し使い。いつもこけてばかりいる…

(長唄の方では大名の変わりに女性ということになってます)は、ここでもご多聞に漏れず『末(先

の方)が広がる』から『傘ダ!』と勘違いしてしまうのでした。(本当は都で騙される)

 さて、その顛末や如何に!幕開き幕開きーーーーチョン!

 そもそも「狂言」から来ているこの物語。幕の開いた舞台は、後ろの板張りの部分に大きく立派な松が、又、脇の方には

縁起の良い竹も、その彩色もいつまでも変わらない願いを込めた、枯れることの無い深い緑が鮮やかに描かれている。

 そこへ主役(シテ)のご主人と、脇役(アド)の太郎冠者が登場!

〈主〉「太郎冠者いるかー〈太〉「はっこちらに 〈主〉「おお、随分早かったな…(ここで末広を求めてくるように言われる)…

〈太〉「やれやれ、うちのご主人様ときたら又恋文でもお使いせよと言うのかな(ここで太郎冠者「扇子」の各部にこと寄せた恋の

唄…掛け言葉と言う。駄洒落とは違う…)〈太〉「本当にこの気持ちも知らないで(白扇)いつかうまく行って逢(青骨)えると

言うものさ 二人の仲はしっかりと(要かなめ…扇子の根元を止めてある所…)。神に誓って夫婦となるさ。おお色っぽいこと。

目出たくて花の雨も降ろうと言うものさ。おおそうだ雨と言えばお使いお使い。「傘をさすなら春日山でのお花見傘じゃ 

花の傘よ 花を浮かべて酒を呑もう そうだそうだよ全くだよ(太郎冠者うかれて目出たく踊っている。)東西南北波も穏やかに

寄せている。末広狩とはなんと目出たいことやら万々歳じゃ。目出たし目出たし。

 如何ですか?「コミカル」を感じられますでしょうか。しかし、演奏する時には、いくら「面白い話」だからと言って、

ふざけ ては演奏出来ません。ゆったりと能舞台らしく演奏しましょう。このように理解すれば「なんだか分からないよお

ー!」などということはないでしょうd(^o^)b。唄の人はそのとき受け持った役どころに応じて、何となくそれらしく唄い、

節のことばかりを考えて頭の中を溢れさせないで、聞いている人が理解しやすいように唄いましょう。三味線も気持ちを

合わせることを心がけ、ただただ覚えた(暗記した)手のことばかりを考えていたのではいけません。考えることは沢山

有ります。内容の情景を思い浮かべるのもそのひとつです。

 例えば:唄「太郎冠者あるかー」で、三味線が「チリチリチリチリドツツンツンツン…」で唄の「おん前にーー」です

が、唄の人は、良く時代劇などで殿様が家来を呼ぶような雰囲気で、どこかにいるはずの太郎冠者を呼んでるつもり。

 すると三味線も、廊下の向こうの方からでも「つつつつつ…」とやってくるような気持ちで、「チリチリチリチリ……」

と行きたいですね。すると又、そこに「ははーー」と手をつかえたように「おん前にー」となると、曲としては小さい曲と

されてましても、結構難しくて面白くなります。


・・・・・次回乞う御期待・・・・・

そして、このページは熱心に勉強しているうちにどんどんと深みにはまってゆくのでした。

……次の曲

To top 

解説の目次経由

お勉強の目次経由


Kinetoku_Kai