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お雑煮

 40年ほど前、我が家にも火鉢がありました。冬になると炭をおこし、失敗すると消えてしまいます。

 お正月は、暮れのうちに切っておいたお餅を、火鉢の炭の上にチェックの網を乗せて、焼きます。だいたい餅を切るときも、舂きたてだとぐにゃぐにゃして切りにくいですし、日にちがたつと固くなって歯こぼれしますし、そんな苦労をした餅ですが、いまどきは切り餅になって売られているので、そういう習慣も忘れられてしまうかもしれません。

 で、焼き餅に戻りますが、焼き餅を焼くのは美女がいいですが、餅を焼くのは大名より○ビ(その頃はなかった言葉)が良いと言われ、私は適任でした。なんで大名ではいけないのかは、今ではあまり知られてないようです。大名は優雅だから網の上に乗せたまま見ているだけですので、焦げるだけ焦げて、中は焼けません。○ビは少しでも早く食べたくて、ちょこまかちょこまかセワシク動いて、ひっきりなしにひっくり返すので、こんがり柔らかでおいしいお餅です。

 ちなみに、魚は大名の方が良いです。ちょこまかひっくり返すと身がぐすぐすになりますし、2回以上焼くと味が落ちますので、片側1回ずつ焼くのが良いです。

 また、ちなみに、おろした(2枚や3枚に)魚は、海の魚は身から焼いて、川の魚は皮のほうから焼くといいと聞いてましたが、実際に海でも川でも魚を身の方から焼くと結構崩れてしまうようです。

 またまた、ちなみに、かれいとひらめはよく間違えますが、顔を上にして、泳ぐ方に向けて手前から見たときに左進行方向を向くのがひらめで、左ひらめの右かれいとか言います。 またまたまた、ちなみに、焼き海苔をつくるときは両面を炙ってはいけません。1度に2枚の海苔のザラザラの面どうしを合わせ持って、ツルツルの面を炙ります。できれば炭火がいいですね。これももしかして記憶が逆かも知れませんので「海苔」のプロの方に表・裏を教えて欲しいです。

 またまたまたまた、脱線し放題なので、餅に戻りましょう。

 我が家の雑煮は(ご幼少の砌……、○ビにご幼少はないか……)、青菜と里芋と大根と人参とそしてお餅が入ります(海老も入っていなければ、肉も入っていない、ああ哀しい……。本当は鳥肉が入っている……。弁解口調がなお哀し)。で、食べる順番があるのです。

 まず、青菜を食べます。そして、お芋を食べます。次に、大根だか人参だかをじゅんぐりに食べます。最後に、お餅をひゅーっと上に伸ばしながら食べます。どうしてかと言いますと、「な いも だい だい もちあがれ=名位も代々持ち上がれ」。名(菜)、位も(芋)、代々(大根とだいだい=人参のいろ)、持ち上がれ(餅・上がれ)というわけです。そうやって「召し上がれ」しました。

 今年は、鏡餅の大きいのを、ご挨拶の日まで新鮮に保とうと、冷凍室で保存しておきました。当日お飾り申し上げましたが、コチコチの間はすべすべ肌でしたが、気がつくと、ひびやアカギレかかとやすねに富士の雪ほど、パキパキに爆発してしまいました。鏡割りの苦労もない代わりに、胃袋におさめる苦労がありそうです。

 話はこれで終わりです。お餅の話と全然関係ないのですが、今年も元気にガンバリマショウ。

(注・「ひびやアカギレかかとやすねに富士の雪ほど」…供奴より)

 新年号より転載      杵屋徳衛


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 話題が「お餅」になったのは、ちょうどお餅を食べながら、書いていたからです。家元の想像力もそろそろ……。いえ、そんなこと言ってはいけません。家元には今年も頑張ってもらわなくてはならないのです(そうしないと、この通信に書くことがなくなる)。半分お遊びのような『三味三昧通信』ですが、今年もご愛読のほどお願い申し上げます。


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