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コーヒーの話  言わせとくえ〜…その12 支離滅裂乱文集より

【まえおき】

 良く飲みます。日本茶もコーヒーも紅茶も水も。お酒は少量。

 そのうち、渋い煎茶が大好き。お点前も大好き。但し流儀無し、ただ飲むだけ。コーヒーの味は、どうでもいい時と、やたらとうるさい時があります。飲む時はブラックだけ。ごく一例をのぞいては。

その一例のお話。

【舞台装置】

 近所に古くからの店のしつらえを変えない一徹なお店がありました。御主人は“一徹者”と言うに相応しいやせ形の風貌をしてますが笑顔がやさしく、決して“偏屈”ではない、昔ながらの正直な一徹者。さる小説家も昔からここでパイプをくゆらせながらゆったりとしていた。

 御自分で「コーヒーとは、これだ」というコンセプトのもと、だからと言って普通の人がいやがるような態度はしません。にこやかです。

お客さんの注文を聞いてから、挽いて、布ドリップします。カップは陶器製で、少し厚めの飾りの何もないただの白い、裾がすぼまっているカップ。

その中に“すりきり”よりほんの少し窪んだ状態の分量で、黒い液体が満たされて運ばれます。ミルクピッチャーが同じ陶器で取っ手のついたもの。これもすりきり。

 私がそこのコーヒーを飲む時だけは、一定のルールで飲みます。

【本題】

さて、ようやく本題(書きたかったこと)へと参ります。

1、最初に砂糖をスプーン1杯半入れます。

2、次に、コーヒーが溢れず、緩やかに回るよう 底の方を静かに、静かにかき回します。

3、ある、速度になった所で渦を崩さない様、スプーンをそっと取り出します。

4、渦が収まらない内に、その渦に巻き込まれてミルクが下に潜らないように、カップの淵にミルクピッチャーを付けて静かに、渦に添ったミルクの筋が引くように満たしてゆきます。

5、ミルクを全部入れると、一面がミルクで覆われます。

6、その量が絶妙で、必ず「コーヒー+砂糖+ミルク」で、約“表面張力”の状態に近くなります。

7、さて、いよいよ飲めます。が、“がぶ”と飲んではいけません。

8、その、ミルク満々の淵から「コーヒーとミルクの境目」から飲みはじめるのです。

9、その一口目が無上の、至福の時。

 コーヒーそのものは元よりですが、こうした飲み方が出来るミルク(生クリーム?)が、先ず他でお目に掛かった事が無い。

両方が相まって、絶妙の深みを燻らせてくれます。

00.09.16

Kineya Tokue