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【最後の一音】  言わせとくえ〜…その11 支離滅裂乱文集より

 20代の頃、洋楽の勉強とかしてまして、まだそのころは、表現のなんたるかも頭の中で考えているだけでした。

 相前後して現代邦楽なるものにご縁がありまして、先日の追善会の故山川直春師について勉強することになりました。

 ご存じのように三味線の音は、「チン」と弾いたら音がのびずに消えてしまいます。で、とかく邦楽家は音と音のあいだの休みが短くなりがちであると、厳しくいわれました。実際の演奏では多少の操作がありますが、さらに忘れられないことは、全ての音に責任を持てといわれたことです。

 具体的にいいますと、それまで、ほとんどの邦楽演奏会で一番最後の「何々ける次第なり」などで最後にシャンと弾く部分のことです。

 シャンと同時に幕が閉まるようにと教わってきた私たちは、弾いているけど弾いていない状態で幕が閉まると同時に「シャありがとうございました」(「ン」はない)と幕の内々で挨拶して、「シャン……」の余韻まで待つことはありませんでした。

 この教えに感銘を受けたそのころより、杵徳派では最後の「ン……」が消えてものびている間だけ息をつめているようにいっています。本当は、最後の最後の音が響き終わってから、その後にお客様の拍手をいただき、そして幕が閉まるという具合にしたいところです。

Kineya Tokue